幻想郷食料事情考察 〜調味料のさしすせそ〜

目次

砂糖 / / 塩(別意見) / / 醤油 / 味噌


砂糖

結論:砂糖は『テンサイ』から採っている。


  砂糖の原材料となるものは、次のようなものがある。

  何てことはない、単に幻想郷の気候で生育できる原材料を選んだだけである。
  毎年冬季に積雪がある幻想郷において、サトウキビとサトウヤシは生育できないだろう。

  サトウカエデを除外した理由は、世界的に見ても日本国内で見ても、砂糖の
多くはサトウキビとテンサイから製造されているからである。
  その中でもテンサイから作る甜菜糖は、国内における砂糖の年間消費量のうち約30%を占めている。
  また、テンサイが西洋から日本に紹介されたのは明治時代初期である。
(安定して栽培できるようになったのはそれから先の話だが。)
  シェア的にも歴史的にも、幻想郷にあってもそれほど不自然でないと考える。

  その製法だが大まかに言うと
  1. 適当な大きさに切った根を茹でて、その糖分を水に溶け出させる。
  2. 糖分の溶けた溶液を煮詰めて糖液にする。
  3. 糖液をろ過して不純物を取り除く。
  4. 結晶と蜜を分離させて、その結晶を取り出す。
というものである。

  幻想郷において、わざわざ砂糖の結晶と蜜を分離させるだろうか、と思う。
  分離前の砂糖と分離後の砂糖の結晶の関係は、サトウキビで言うところの
黒砂糖と白砂糖の関係である。
  筆者は、幻想郷では、糖液を煮詰めて水分を取り去っただけの状態で
販売されているのでは、と想像する。
  もし砂糖の結晶にまできちんと精製しているなら、例えば紅茶に入れる砂糖は
高価な品となるだろう。

結論:幻想郷内にて塩は採れない。
塩分の含まれる他の食材でで塩分補給をしているか、
もしくは外の世界から何らかの形で得ている。



  いきなり何ともしがたい結論を述べたが、以下、幻想郷にて塩が採れない
理由を考察する。

  幻想郷の塩を語る上で参考となるのが、『東方儚月抄』である。
  以下、考察に必要な文章を抜粋する。

  • 「幻想郷に海は無い」
    (作中に数回登場するフレーズ)
  • 「海とは塩化ナトリウムなどの塩分が溶け込んだ膨大な量の水を湛えた、
    言わば大きな湖である。地表の七割を覆う海水。そんな物をどうやって作る
    というのだろうか。幻想郷で岩塩が見つかった形跡はない。そんなに大量
    の塩なんていくら人間の血液を集めたって……いや、そんな塩分の問題ではないな。」
    (小説版p173より)

  また、塩は大きく分けて次の原材料から作られる。
  1. 海水
    海水から水分を蒸発させて塩の結晶を取り出す。
    一度高濃度の塩水に濃縮してからこれを行う場合もある。
  2. 岩塩
    水に溶かしてろ過して不純物を取り除き、煮詰めて水分を蒸発させて
    塩の結晶を取り出す。
  3. 塩湖
    塩分を含んだ湖水から水分を蒸発させて塩の結晶を取り出す。
  4. その他
    古代日本では、海草などの海産物を集めて焼き、その灰を溶かした水を
    ろ過し煮詰めて塩を取り出していたようである。

  さて、作中に登場した文章からは、はっきりと「1.海水」「2.岩塩」の二大原材料
が幻想郷では採れないことを表している。
  ならば、幻想郷には「3.塩湖」があるのではないか?ということになるが、
そもそも日本には岩塩も塩湖も元から存在しない。
  岩塩が無いと明言されている以上、都合よく塩湖があるとは思えない。
  "世界のどこかで消滅した塩湖が幻想郷入りしている"という考え方も無くは
ないが、後述する説明にてこの考え方も否定しよう。
  また、「4.その他」であるが、ここで紹介した海草の例は、海があることが前提
である。幻想郷で海草が採れる筈はない。

  さて、では上述した4つ以外で、多少強引にでも、塩化ナトリウムNaClを入手
する方法はないものか。以下の2つを挙げてみる。

  1. 他の動物の血肉から摂取
    いかなる動物でも、塩は必要不可欠な要素である。当然、動物の血肉には
    塩分が含まれている。つまり塩の「結晶」としては採取しない。しかし、これで
    十分な量の塩分が採れるかというと疑問である。調味料として塩が使えない
    ということになってしまい、幻想郷内の食文化の発展の妨げになるだろう。
    (それどころじゃないぞ)
  2. 塩化物泉
    つまり、塩分を含んだ温泉である。日本国内にも、内陸の県にも湧き出ている
    場所は数多い。温泉水ゆえ様々な物質が含まれていると考えられるため、
    そのまま煮詰めるのでなく、ろ過して不純物を取り除いたり、化学的に不純物
    を取り除いたりする必要があるのかもしれない。
  なんだ、塩を入手する方法で「6.塩化物泉」とかあるじゃないか、と思うだろうか。
  だが、ここで、「3.塩湖」の可能性も含め、改めて幻想郷で塩が採れないことを説明する。
  前述した『儚月抄』の文章、岩塩のことが書かれている箇所の話の流れを
もう一度読んで欲しい。
  この部分は、幻想郷に海が無い、海水から塩が採れないことを前提として、
「(レミリアは)どうやって塩を入手するのだろうか」
     ↓
「幻想郷に岩塩は無い」
     ↓
「まさか人間の血から…」
という流れである。
  ここでいう岩塩は、「岩塩は無いけど他の塩の採取手段はあるかも」という
可能性を示唆しているものではない。岩塩の次に人間の血という突拍子もない
方法が述べられていることからも、ここで神主が岩塩を持ちだした理由はつまり
「幻想郷内の陸地で塩が採れない」ことを言いたかったのだと、そう読み取れる。
  単純な話だ。
  「塩も採れない幻想郷でレミリアはどうやって海を作るのだろう」と、こういう意味
であり、どうやったら塩が採れるんだろうという考察屋の努力を消し去る表現だ。
  それもその筈、おそらく神主は幻想郷住人が塩をどこで手に入れているのか
なんて考えてもいないのだろうから!

  したがって我々が考えなければならないのは、「幻想郷内で塩は採れない」
ことを前提として、なおかつ「幻想郷住人はどうやって塩を採取しているのだろう」
ということなのだ。

  無理難題だ。
  輝夜のスペカで難題『幻想郷の塩』とか出てきても不思議じゃない。

  以上の理由により、冒頭に示した結論を出した。外の世界から塩を得ている
とすると、それがどのようなルートによるものなのか…想像の域を出ない。
  幻想郷入りしたどこかの塩が入ってくるのか、マレビトのような行商人が塩を
持ちこんでくるのだろうか…。

  ちなみに、『塩を無限に出す挽き臼』説や、『錬金術で塩【えん】を精製』説は
考えておりません。

  塩が「採れない」だけで、幻想郷に塩が「無い」訳では無い。
  幻想郷において塩は希少品であることは間違い無い。

塩は希少品

塩(別意見)

結論:幻想郷内にて塩は採れる。
塩泉製塩により幻想郷内の塩需要をまかなうことは可能。



  これは、武原秋泉氏から頂いた考察文である。
上述した筆者の考察の結論に対する意見文ではあるが、
確たる資料と十分な信憑性を持ち、筆者も大いに納得するところとなった。
このため、武原氏の了解を頂き、ここにその要約を記載することにする。

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 小説儚月抄において言及されているのは、「地表の七割を覆うという海水を再現するほどの大量の塩を得るには、『海塩を除けば』その程度しかない」という意味に読み取れる。
 神主が言う海というのは『図書館のプール』程度の海ではなく、『幻想郷の面積に対して七割を覆う広さの海』ということである。
 故に、『大量の海水』を作るだけの『大量の塩』を得る為の手段として岩塩と血液が挙がったのではないかと推測できる。


 では、なぜ岩塩と血液が候補に挙がったのかを考察する。

 まず、世界の塩生産方法として全体の28%近くを占めるのが岩塩である。
 海塩を除いた際に思い浮かぶ塩として、海塩の次に生産量の多い岩塩が出てくるのは自然であろう。

 次に、問題の『血液』であるが、これは突拍子もないと言い切れるのだろうか。
 そもそも考えてもみれば、海塩と岩塩を除いて、前述の海を作ることのできる(又はそれに近付けることのできる)程の『大量の塩を得る手段』というと、思い浮かぶものは無い。
 この場面での説明は『吸血鬼たるレミリアが幻想郷に海を作ると言いだしたこと』に関するものであるので、「レミリアが塩の問題を解消しようとした場合、彼女はどういう方法を取るだろうか」ということを『レミリア(吸血鬼)の視点から考えた場合』のものであると考えられる。
 そのため『吸血鬼らしい考え』として『血液』が出たのではないだろうか。

 それらを踏まえた上で、この場面の説明では『海という大量の海水を作る為に必要なもの』として岩塩と血液が挙げられているというだけであって、「幻想郷内にて塩は採れない」ということを言っている訳ではないのだと結論する。


 ちなみに一番自然ではないかという製塩方法は、『山水塩』即ち『塩化物泉』であろう。
 いわゆる『塩辛い温泉』などの、山間に湧き出る温泉ないし水を利用した製塩によるものである。
 幻想郷は周囲を山々に囲まれた地域であるし、何より活火山である旧八ヶ岳がある。
 地下には旧地獄があり、『地霊殿』において間欠泉が吹き出した例もあることから、地下に温泉水脈があることは十分に考えられる。

 さらに、この『塩化物泉』説の妥当性を裏付けるために、日本国内における実際の『内陸製塩』の例を採り上げる。

 まずは、長野県の例である。
 長野の大鹿村鹿塩というところには古来塩井があって、これはご存知『武御名方神(タケミナカタノカミ)』がこの地で狩りを催した折、鹿が好んで飲む水を飲んでみたことから発見したと云い伝えられているようである。
 井出道貞の『信濃奇勝録』という記録によると、「鹿塩の里は高遠より八里飯田へも八里ありて前岳の麓に有」と記述されており、鹿塩という処もしっかり山中であったようである。
 同資料には、「この地には塩川という川があって、その辺には塩井が多い。中でも特に多く出る処が二ヶ所あったが、内一つは洪水により埋もれた」とあり、「今は塩畑と呼ばれていて、大きさ四尺ばかり擂鉢形の処があり、この岩中より塩水多く湧き出る」と、かなり具体的な記述が載せられている。
 「焼けば白塩となって、焼かずに使用しても焼き塩のようである」ということらしい。
 里人はこの塩水を『塩水ヤナ』と呼ばれる約二十七リットルもの水が入る背負い易い樽に汲み取っていき、煮物や漬物は勿論のこと、味噌や醤油に至るまで広く使用していたようである。

 次に、福島県の例である。
 福島の塩沢村(現在の福島県南会津郡只見町塩沢周辺か)という村なのだが、『塵塚物語』という文書に「塩沢村近辺の山間に塩泉の湧き出す洞窟があった。
 塩焼小屋が6軒もあり、村民が農業の合間に製塩しており、他の村まで供給していた。
 味が軽く、白い塩だった」というような記述があるそうだ。
 『福島県史』所収史料の『津川廻り御囲塩駄送人足代御免願』からは、峠越えで運ばれた尾道塩と、地塩(塩沢で生産された山塩)だけで需要が賄われており、塩沢産山塩の供給圏が村外(奥只見大塩11か村)に広がっていたということも読み取れるそうである。
 「村民が農業の合間に製塩し、他の村まで供給していた」というのは、自給を満たした上で供給していると考えるのが自然であろう。
 藩政期には山越えで入ってくる瀬戸内塩と合わせて消費圏を形成していたという話であるから、地塩のみで全地域へ賄えるほどではなかったようだが、この示唆を得た記述によれば「奥只見大塩11か村」というのは地図で見る限りかなりの広い範囲であったらしく、これは単に消費圏の規模的な問題ではないかと言っている。
 さらに大塩村(福島県耶麻郡北塩原村大塩)でも塩泉製塩が行われていたようだ。
 また『新編会津風土記』という資料に、塩井の数や大きさ、塩が乏しいのを見た弘法大師が塩井井戸を湧き出させた伝説、塩を焼いて生業とする者があったことが記録されているようである。
 さらに『半日閑話』という資料に、海辺から離れた山中で塩を焼く珍事として紹介し、「例年会津守護より公方様へ献上」と記録されているらしく、当時としても珍しいことだったのだろう。
 古代にさかのぼる弘法大師の湧出伝説だけでなく、「浦遠きこの山里にいつよりかたえず今でも塩やみちのく」という西行法師の歌もあり、かなり古くから製塩が行われていたことがうかがわれる。

 また上記地域以外だと、山形の小野川では塩泉に何度も砂を撒いて乾燥させ、得た鹹砂を溶出して鹹水を作り、その鹹水から結晶塩を生産していたという。
 栃木の栗山村というところでは、塩泉から汲み上げた水をそのまま調理に使っていたというところもあるようである。

 幻想郷がどの地域に属しているかは判らないが、これらの記述から少なくとも内陸製塩のみでも共同体全域に十分な量の塩を供給することは可能だと判った。
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  以上、貴重な御意見ありがとうございました。

[参考リンク]
 ●財団法人塩事業センター
 ●塩の情報室


結論:色々な作物から普通に作れる。


  酢は世界最古の調味料とも言われており、その種類もかなり多い。
  以下の2系統に大きく分類される。

  1. 穀物酢:米や麦などの穀物を原料とした酢
  2. 果実酢:リンゴやブドウ、その他様々な果実を原料とした酢

  上記はまとめて『醸造酢』と言われる。穀物や果実以外を原料とした酢もある。
  旨味成分などを添加した『合成酢』というものもあるが、幻想郷ではそこまでしない
だろう。醸造酢が一般的な筈だ。

  製造方法も、(単純に表現するなら)酒の発酵をさらに進めたものだ。
  幻想郷内において十分に生産可能だと考えられる。

醤油

結論:塩さえ入手できれば問題なく可能。


  醤油は、大豆及び小麦を麹菌や乳酸菌、酵母などで発酵させた調味料である。
  日本の食文化と切っても切れない関係で、醤油無くしては成り立たない料理も
多い。古くから製造されてきており、幻想郷が隔離される前から人間の里に醸造元
があったとすれば、技術的な問題点は無いだろう。発酵に必要な菌類もすでに
持っていたとすれば問題無い。

  ああ、だがしかし、問題は原料なのだ。
  醤油の製造には塩が欠かせない。
  そして既述したように、幻想郷の塩の入手経路はやはり謎なのだ。
  塩の問題がクリアできれば、他の材料の栽培は十分可能であるため、幻想郷製
醤油は実現可能である。

  幻想郷が日本のどこにあるのかで醤油の傾向(濃口か淡口かなど)も分かるが、
そもそも塩の入手性自体が疑われるような地理環境のため、塩分のより少ない
濃口系ではないか、いやもっといくと減塩醤油のようなものが主流ではないか、
と想像。
(蛇足。神主曰く「幻想郷は東北か四国の山の中のイメージ」らしいが、最近は
 神主の地元の信州のイメージも入っているのでは、と言われている。醤油の味
 を特定するには、広範囲過ぎる。)


味噌

結論:塩さえ入手できれば問題なく可能。


  味噌は、主に大豆を原料とし麹や塩を混ぜて発酵させた食品、調味料である。
元々は保存食として食されていたなど、その用途は幅広い。原料や発酵期間に
よって様々な種類がある。

  ああ、だがしかし、醤油と同じく味噌も塩が欠かせないのだ。
  塩以外の原料、製造技術の問題は醤油と同じくほぼ無いと言っても良い。
  塩だ塩!塩が問題なのだ!
味噌は主食級


参考:「調味料辞典」さま  http://spice.kh23.com/flavor/

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