結論:香辛料のほとんどが幻想郷では栽培不可能。
日本料理にて使用される数種類の香辛料と
薬味を駆使して、味付けを行う。
最初に、香辛料関係の情報を明記しておくことにする。
まず言っておくが、香辛料の定義は唱える人によって様々であり、
その種類や品目も細かい所では違いがある。
ここでは数種類の香辛料をふんだんに用いる料理であるカレーを
主に例にとって考察を行うことにするが、
用いる香辛料の多少の違いには目をつぶる。
香辛料の定義の一例を挙げてみよう。
食材としての香辛料についての定義である。
『味覚・嗅覚・視覚・痛覚・温覚など様々な感覚神経の刺激を介して、食味を向上させたり、
単調な食品の風味に変化を与えて食欲増進をもたらすもの』
時代や場所によって内容は様々だが、例を挙げておこう。
オイルスパイス、アニスシード、アナットシード、バジルリーフ、ベイリーフ(ローレル)、
カプシカム、キャラウェイシード、ブラックキャラウェイ、カルダモンシード、カッシア、
セロリシード、チャービル、チャイブ、シラントロ(コリアンダーリーフ)、シナモン、
クローブス、コリアンダーシード、クミンシード、ディルシード、フェンネルシード、
フェヌグリークシード、乾燥ガーリック、ジンジャー、グレインオブパラダイス、メース、
マジョラム、マスタード、ナツメグ、乾燥オニオン、オレガノ、パプリカ、パセリ、ペッパー、
ペパーミント、ポピーシード、ローズマリー、サフラン、セイジ、サボリー、セサミシード、
スペアミント、スターアニス、タラゴン、タイム、ターメリック、(FAD 1983年)
さて、先ほど香辛料の定義を挙げた際、食材としての″$h料、と表現した。
これは、香辛料には味のアクセント∴ネ外にも重要な効果があるためである。
それは、他の食材に対する防腐機能、防菌機能などである。
肉料理を中心として発達してきた西洋料理では、これら機能を備えた香辛料は
重要な地位を築いてきた。
これに対し、日本料理では野菜や魚料理が中心であり、また新鮮な素材に恵まれ、
その自然の持ち味を生かして食べるという習慣があることから、
西洋料理ほど香辛料の機能の必要性がなかったと考えられる。
逆に、日本では『薬味』と言われる調味料が発達した。
薬味とは、
『料理に応じて特定の食品を添えて、料理をより望ましい状態で食するためのもの』
と主に定義される。
薬味の例も挙げておこう。
柚子、山椒、紫蘇、冥加、フキノトウ、タデ、セリ、ミツバ、ウド、ゴボウ、
アサツキ、ネギ、ワサビ、胡椒、カラシ、胡麻、海苔、唐辛子、レモン、おろし大根、にんにく
以上の情報を基本として、幻想郷……というか日本で栽培できる香辛料はと言うと。
少ない!と言わざると得ないのが現状である。
先に挙げた香辛料一覧の中でも、日本料理に用いられる香辛料は
玉葱【オニオン】、大蒜【ガーリック】、生姜【ジンジャー】、辛子【マスタード】
くらいであろう。
香辛料のほとんどは、中東・インド・東南アジア・中南米など赤道近くの国が原産である。
日本の気候には絶対に合わないのだ。
日本でもよく用いられるコショウでさえ、国内栽培の例はほとんど無い。
そうさ、幻想郷では塩コショウの味付けさえ、難しいのだよ。
さて、カレーの話題に移ろう。
とあるカレー粉のレシピを参考にして、カレー粉に用いられる香辛料の情報を挙げよう。
- オールスパイス:
フトモモ科の植物ピメントの種子。
シナモン、クローブ、ナツメグの3つの香りを持つと言われる。
フレーバー特性は、香辛料特有の香味。
日本の環境は生育に合わない。
- コリアンダー(こえんどろ):
地中海沿岸原産のセリ科の一年草。中華料理に用いられる『香菜』と同じ。
フレーバー特性は、香辛料特有の香味。
千葉県にて栽培されている事例を確認。
- クミン(馬芹【バキン】):
エジプト原産のセリ科の一年草。
フレーバー特性は、カレー独特の香味と果実風味。
日本の環境は生育に合わない。
- フェネグリーク(ころは):
南東欧〜西アジア原産のマメ科。中国でも生産される。
フレーバー特性は、苦味と甘味。
日本の環境は生育に合わない。
- 生姜:
熱帯アジア原産のショウガ科の多年草の根茎。
フレーバー特性は、香辛料特有の香味、辛味。
日本では高知や千葉など温かい地方が主な産地。
- 唐辛子:
南米原産のナス科の植物の果実。
フレーバー特性は、香辛料特有の辛味。
日本では北関東などが主な産地。
- 辛子(カラシ):
地中海沿岸〜中東原産のカラシナの種子。
黒カラシ、白カラシ、和カラシなど種がいくつか分かれる。
フレーバー特性は、香辛料特有の辛味。
日本では広く栽培される。
- ペッパー(胡椒):
インド原産のコショウ科の蔓植物の種子。
未熟果を強制乾燥させるとグリーンペッパー、自然天日乾燥させるとブラックペッパー、
発酵させ外皮を除去して乾燥したものがホワイトペッパーである。
カレーには、ブラックペッパーとホワイトペッパーが用いられる。
フレーバー特性は、香辛料特有の辛味。
高温多湿を好むが非耐寒性で、日本の環境は生育に合わない。
- ターメリック(ウコン):
インド〜東南アジア原産のショウガ科。中国でも生産される。
フレーバー特性は、苦味、着色性。
高温多湿に強いが非耐寒性で、日本の環境は生育に合わない。
- クローブ(丁子【チョウジ】):
東南アジア原産のフトモモ科の常緑樹。
フレーバー特性は、香辛料特有の香味、刺激と甘味。
高温多湿を好むが非耐寒性で、日本の環境は生育に合わない。
- フェンネル(茴香【ウイキョウ】):
南欧〜西アジア原産のセリ科の多年草。
フレーバー特性は、香草風、果実風味。
千葉県にて栽培されている事例を確認。初夏に黄色い花を咲かせる。
- カルダモン(小荳?【ショウズク】):
インド〜東南アジア原産のショウガ科の多年草の種子。
フレーバー特性は、香辛料特有の香味、果実風味。
日本の環境は生育に合わない。
カレー独特の、あの香味を持つ香辛料が、日本では栽培できないのだ。
しかし材料の半分くらいは、日本でも栽培可能らしい。
危険なのが、日本で栽培可能<mットイコール幻想郷で栽培可能
であるという点であるが、
日本で栽培されているものの様子を見ると、それほど極端に温かい気候
でなければ育たないものはないと思われる。
つまり、カレーを作るには、オールスパイス、クミン、フェネグリーク、
コショウ、ターメリック、クローブ、カルダモンなどへの対応が必要だ。
これらに対しては、以下の案が考えられる。
- 代替品を使用する。
薬味に用いる食材にて、なんとか代わりにできないだろうか。
- 熱帯温室の設置
日本の環境に合わないのなら、熱帯の環境を作ればいいのだ。
結論:香辛料として使用される種子の樹木を育てるためには
熱帯植物園並みの大きな温室が必要。
ヒーターの熱源には、間欠泉を使用可能。
ただし、かなりの費用が掛かる。
ここでは、前述した対策案2.である『熱帯温室の設置』について考える。
ちなみに、日本の農地で良く見られるビニールハウス程度のものではない。
霜を防いだり、温帯の気温を維持させる程度のものではない。
必要なのは、熱帯の環境なのだ。
香辛料を栽培するのに必要な温室の条件は、以下の項目が考えられる。
- 一年を通じて気温15℃以上の室温を維持する温度調節機能
- 湿度の調節機能
- 温度を外気に逃がさないための温室材料
やはりビニールよりはガラスを使用したい。
- ある程度の温室建物の高さ(全長)
クローブやコショウなどは、樹木の生育が必要。
これらの条件を元に、筆者が考案した幻想郷温室の概略図を以下に示す。
妖怪の山の河童にでも作ってもらおう。
なんという熱帯植物園。
これさえあれば、幻想郷において、ほとんどの植物の栽培が可能に
なるのではないか。
ちなみに、気温の維持には、間欠泉の熱湯を利用した
温水ヒーター装置を採用した。
日本の熱帯植物園にも、例えばゴミ焼却場の排熱を利用して
気温の維持をしているところがある。
長野県諏訪市の間欠泉なども100℃近くあるので、
間欠泉を温水ヒーターに用いて温室を温めることは不可能ではないだろう。
ただ、費用の面は計り知れない。
カレー屋でも開いて、少しずつ借金を返す生活を考えるなら
建ててみるのはどうだろうか。
ついでに言っておくが、
かかるのはお金だけではない。
時間もかかる。
コショウは、収穫できるようになるまで3年。
クローブに至っては10年近くかかる。
幻想郷においてカレーを食べられる日が来るのは、おそらく無い。