博麗神社考

目次

立地 / 幻想郷住人の博麗神社への参拝はどうしているのか / なぜ東向き? / 神社社殿巫女住居の間取り


立地

  まず、結論から言っておくが、博麗神社は幻想郷の方向を向いていない。完全に、幻想郷に対して真逆の方向を向いて建っているのであると考えられ、 したがって幻想郷を見渡せるのは、神社の裏庭(裏境内)からなのである。
  さて、この結論に達するまでを証明する。公式テキストから、必要な箇所を抜き出そう。

  • 幻想郷の東の端に存在する唯一の神社。(求聞史記)
  • 「そうそう、霊夢は鳥居の向きを東じゃなくて南向きにすれば、もっと幸運が訪れるわー。」(花 てゐvs霊夢)
  • 神社からみるとお彼岸の日には鳥居から日が昇り──(三月精)
  まず、博麗神社は幻想郷の東の端に建っている。
  もう一度言うが、幻想郷の東の端、である。

  そして、2番目のテキストには、
 「鳥居の向きを東じゃなくて──」
  と、書いてある。

  鳥居は東向き。実は、3番目のテキストも同じ事を言っているのだ。

  お彼岸というのは、春と秋にそれぞれ存在しているがそれぞれ『春分の日』と『秋分の日』を含めた一週間ずつ、と設定されている。 つまり、お彼岸の日には太陽は真東から昇る、という事である。

  「神社から見て鳥居から日が昇り」
  とあるので、神社から見て鳥居は真東に立っている、という訳だ。

  博麗神社の鳥居は神社から見て東の方向に立っている。幻想郷の東にある神社の鳥居が、東向き。   よって、博麗神社は東向きとなり、博麗神社は幻想郷とは反対側を向いて建っていることになるのだ。


  また、神社周辺の様子については、比良坂さん版『三月精』シリーズ1の3巻にて、詳しく説明されている。
  霊夢の推測も含まれるが、信憑性が高い雰囲気はある。
  情報をまとめると、以下の様になる。
  • 神社の周辺の森は、人為的に植えられたもの
  • 神社の周辺の森の範囲が、神社の境内に相当する
  • 神社の周辺の森の、神社裏の端には大きなミズナラの木がある(現在は別の木で、三月精達の別荘)
  • 境内内は、幻想郷にも外の世界にも属している"境界の中"
  • 境界は、神社の社殿の存在に依らず、むしろ周辺の森や端の大木の存在に依っている
  • 元々、大木に囲まれていた"特別な場所"に神社を建て、木を植え森にした
  神社の周辺の森、つまり"鎮守の森"は、結構広い面積に渡って広がっているようである。
  また、博麗大結界の中に存在し、幻想郷と外の世界の両方に属していることは、求聞史紀にも記載がある。
  さらに、『永夜抄』詠唱組エンディングの一つに、神社の境内が結界の境だという言及が出てくる。

  以上の情報を基に、まとめた図を以下に示す。
岳州が想像する博麗神社境内

幻想郷住人の博麗神社への参拝はどうしているのか

  神社が幻想郷の端であり、尚且つ外を向いているのだとしたら、
幻想郷の人間はどうやって神社に参拝すればいいのだろうか?
  きちんと鳥居をくぐって参るのなら、一度大結界を越えなければならない。

  とは言っても、大結界は物質を遮断するものではないので
越えようと思えば越えられる筈である。
  現に、光の三妖精達は『三月精』内で、
神社から見て遥か東の空にまで飛んで行っている。

  大結界を越えても大丈夫なのだろうか?
  紫に怒られないのだろうか?

  違うのである。
  まず、大結界を越える≠ニいう事は物理的なことではない。
  大結界は、歩いたり飛んだりして越える様なモノではないのだ。
  実際、霖之助などは香霖堂の店内に居ながら、
外の世界の道具を介して外の世界を想うことで、大結界を越えている。
  つまり博麗神社より東の方向へ進んだとしても、
言い換えれば博麗神社の境内より東の方向へ進んだとしても、
ただ進んだだけでは大結界は越えていないのである。

  ただひたすらに東の方向へ進んだとしても、
幻想郷の住人は外の世界を認識できない。
  外の世界の住人が幻想郷を認識できないのと同じである。
  なぜなら、もう一度言うが
地理的な意味で幻想郷の境を越えたとしても、
常識と非常識の境界≠ナある大結界は越えていないからである。

  よって、幻想郷の住人が博麗神社に参拝するためには、
神社の東側へぐるっと回りこんでから参道を登る……という手順で
問題ないはずである。


なぜ東向き?

  そもそも、なぜ神社は東向きに建てられているのだろうか。

  『三月精』の霊夢によると、

 「この時期(※筆者注:彼岸の時期のこと)
  日の出が鳥居を通して昇ることでお日様が最も力を持って
  それが墓地に沈むことによって霊の力を抑えるワケよ。」
であるらしい。
  これが本当ならば、鳥居が神社の東に立っていなければならない理由はこれになる。

  しかし普通に考えれば、
神社の参道が外の世界の方向へ伸びているのだから、
博麗神社は外の世界の人間が訪れる事を想定して建てられている……筈である。

  博麗神社建立の目的は大結界の管理。
  つまり博麗神社、大結界、共に
外の人間によるものだ、と考えられる。

  この考え方は、信憑性が薄い事で知られる『幻想郷風土記』の内容──
 「外の人間が妖怪達をまとめて隔離する為に張ったもの」
という結界は外の世界の為のもの≠フ考えに繋がると思われる。

  先に述べた「神社の周辺の森は人為的なもの」という記述も、
幻想となった天然の森が広がる幻想郷の中に、
人工的に植林した森という"外の世界の成分"を入れることで、
  外の世界にも属するように設計した……とも考えられる。
  外の世界にも属していないと、外の世界の人間が神社に来ることが困難になる。

  逆に現在、幻想郷内では
阿求が書いた『幻想郷縁起』が公開された事もあり、
 「大結界は幻想郷存続の為に張られたもの」
という結界は幻想郷の為のもの≠フ考えが一般であるだろう。
  ただ、『幻想郷縁起』つまり『求聞史紀』は、幻想郷の"真実"と"事実"をところどころ隠した
"作られた歴史"であるという意見を私は持っている。

  どちらが正しいのだろうか。

神社社殿巫女住居の間取り

  博麗神社は公式・二次創作問わず多くの人妖が集まる場所であり
幻想郷内で最もその外観が描かれる事が多い建物である。

  そんな博麗神社だが、その内部はどうなっているのだろうか。
  比良坂さん版『三月精』内の描写を元にして考えてみたい。

  この『三月精』1巻において興味深いのが、
p.32内3コマ目と、p.102・103である。

  p.32内3コマ目では裏庭から見た神社の西側及び南側が描かれている。
  (神社の東側には鳥居もある。)

岳州が想像する博麗神社内

  ……床の間がこの位置にあるのはおかしい気もするが……。
  まあ、こんな感じである。
  神社側にまで続く長い縁側が目に付く。
  いつも霊夢が友人とちゃぶ台を囲んで茶をすすっているのが座敷である。
  煙が出ていた上開きの窓が気になる。


  また、p.102・103には土間の様子が描かれている。

岳州が想像する博麗神社土間

  まず、玄関があり、土間があって、流しとカマドがある。
  昭和初期〜中期頃の民家の土間であろう。

  手押しポンプが流し台横に設置されている。
  手押しポンプ自体は明治時代初めに日本へ紹介され、
そして第二次世界大戦後まで、手押しポンプは使われ続けた。
  町中には共同の井戸に手押しポンプをつけたものが多くあったが、
このように室内の流しの横に水道の蛇口のようにポンプが置かれている例も
全く珍しくない。
  ただ、気圧の関係で地下10メートルくらいまでしか汲み上げられないらしい。
  幻想郷が見渡せるほど高台に建っている博麗神社の水事情が気になる。

  次に流し台。
  これはタイル張りになっている。
  昭和初期にはすでにタイル張りの流しは普及していた。
  他にも、ただの木製の流し台・ブリキの流し台・セメントの流し台などもあった。
  ステンレス製のものが登場するのは戦後である。

  その横には、レンガ造りのカマドがある。
  おそらく、昭和20〜30年頃に急速に普及した『改良竃』という形式である。
  それまでのカマドに対して、レンガや鉄板などで造られ、
煙突や火格子などのオプションが付け加えられている。
  また、カマドの下には何やらオーブンのようなものまでついている。
  これはカマドの空気口か、もしくは天火(余熱利用で餅・魚・パンなどを焼く部分)か。

  甕【かめ】には、食用の魚が生きたまま入っている事が『三月精』で語られている。
  おそらく玄関横に二つ並んでいるのは水や魚用の大きな甕。
  漬物用などの甕は別の場所にあると思われる。
  他にも味噌・塩・砂糖なども普通は甕で保存するものだが、
流し台正面の棚に調味料が普通に置いてある。
  (余談だが、幻想郷における塩の入手経路は以前から延々と議論され続けており、
 岩塩説や、塩を無尽蔵に出す碾き臼説などがあるが結論が出る事は無い。)

  流し台やカマドの後ろには上げ板があり、その奥に部屋がある。
  玄関があるので、ここが正式な床上への上がり口になるのだろう。
  普段は靴をここで脱ぐと思われる。
(ただし、身分の高い客人を家に招き入れる際には縁側から座敷に上がってもらう。)
  基本的な間取りで考えれば、この奥には囲炉裏などがある居間に続くと思われるが、
今まで公式で霊夢が囲炉裏端で何かしている描写は無いため
ただの広間である可能性も高い。

  ここで、カマドの正面にある上開きの窓に注目。
  この窓は、p.32内3コマ目に描かれていた煙が出ている窓だろうか?
他にも火を扱う場所として風呂場などが考えられるので、
  答えは出せない。
  ただ、風呂場は高確率で土間に面している。
  流しなどと合わせて、水周りの設備は一箇所に固めた方がよいからである。


  倉や物置などの収納・便所・風呂場などは母屋とは別にあることも多いため
外部設備がどの程度あるのかも知りたいところである。


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